2年かけて自社ECサイトを再構築した話 #1

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サントリーウエルネス DX推進部ディレクションGの大洞です。
サントリーウエルネス公式ECサイト「サントリーウエルネスオンライン」の企画・開発の統括を担当しています。

サントリーウエルネスオンラインは2023年8月に大規模なリニューアルを実施しました。

大分時間がたってしまったのですが、改めてリニューアルまでの道のりを振り返ってみようと思います。
また、一口にリニューアルと言ってもシステム最適化の手法としてはリファクタリング・リアーキなど様々あると思いますが、サントリーウエルネスオンラインはリビルドという選択肢を取りました(以後、リビルドという表記に統一します)。

リビルド完了まではとてつもなく、長く険しく、甘酸っぱい道のりだったため、何回かに分けて書いていこうと思います。

リビルドに至った経緯

まず何故サントリーウエルネスオンラインのリビルドが必要だったのかということを簡単に説明します。

私がサントリーウエルネスに入社した2021年は、サントリーウエルネスでは従来の「モノ」から「モノ+サービス」へと事業戦略が大きく舵を切ったタイミングでした。その中でサントリーウエルネスオンラインの担当となった私は今後サービスを軸に運営していくうえで、顧客とのデジタル接点の強化は真っ先に取り組まなければいけないテーマだと思いました。

ただ、顧客とのデジタル接点の要になるべきサントリーウエルネスオンラインは様々な課題を抱えており(後述参照)、既存のシステムの延長戦ではその責務を全うできないと判断し、リビルドを実施することを決めました。

既存システムが抱えていた課題

従来のサントリーウエルネスオンラインは約20年間、老舗うなぎ屋のたれのように継ぎ足し継ぎ足しをされたようなシステムでした。以下に代表的な課題を書きます。

  • システム品質が著しく低い

    • 私が着任した際にJIRAでの障害管理を導入したところ、1年間で400件以上のシステム障害が起票されました。デザイン崩れのような軽微なものから、商品を購入できない、サイトが停止するなど重篤なものまで、毎日が障害との格闘でした。
  • 機能拡張性がない

    • 各画面や機能が共通化されておらずコピペで増殖されており、ちょっとした機能を追加しようとすると100画面以上の改修が必要、というような状態でした。

リビルドを始める前に

着任して早々に上記の課題感を断片的に捉え始め、リビルドの必要性を感じたのですが、実はリビルドプロジェクトを直ぐには実行しませんでした。まずは既存の開発フローや業務フローを理解し、既存システムの負を明確にすることと、既存システムの範囲でも取り組める改善を通して、各ステークホルダーとの関係性を築くことを意識して活動をしていました。

一見すると遠回りに思われるかもしれませんが、この助走期間のおかげで既存システムの理解やステークホルダーとの関係性が深まり、その後のリビルドプロジェクト自体が進めやすくなった気がします。

いきなり外部から来た人間が中身を何も分かってないのに「イケてないよね、だからリビルドします!」って言っても誰もついてきてくれなかっただろうし、自分自身何も分かってない状態で進めるのは相当難しかっただろうなと改めて思います。

いよいよリビルド!?

さて、日々の運用業務改善活動などと並行しながらいよいよリビルドに向けて動き出します。リビルドといってもまず何からやるのか、どういうアーキテクチャにするのか、どこまでスコープを拡げるのか、悩みますよね。

ただここでも遠回りというか、1回クッションを挟みました。いきなりリビルドプロジェクトを開始するのではなく、その前段階としてリホストに取り組みました。既存システムはサントリー全社で運用されているオンプレ環境で稼働していたのですが、それらを全てAWS環境にリホストしました。

リビルドの際には今後の拡張性や保守性を鑑みて、AWS環境でモダンなアーキテクチャを構成したいとぼんやりと考えていましたが、当時はまだサントリーウエルネスではAWS環境で稼働するシステムがなく、その知見やインフラエンジニアのリソースがありませんでした。

そのため、まずはAWS環境へのリホストを通して、AWS環境を運用保守していく体制を構築しました。こうすることでリビルドプロジェクトでは既存システムを理解したうえで作業を進められたため、新しいアーキテクチャの検討や構築がスムーズに進みました。

またこのタイミングでソースコードから主要な機能や画面のリバースエンジニアリングを実施し、今後のリビルドの進め方を見据えたり、AWS上で動かすことで色んなことが手に取るように分かるようになってきました。加えて、本格的なリビルドに向けて技術検証を容易に実施できました。

リホストを完了したのが2022年4月、着任してから8カ月が経過していました。

まだ世の中向けには全然価値発揮できてないぞ!と焦りながらもいよいよ本格的なリビルドプロジェクトを始動させます。

書き出してみると思いのほか長くなってきたので、リビルドプロジェクト本編は次回のブログに書くことにします。お楽しみに…。