DevOpsDays Tokyo 2024に参加してみた

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サントリーウエルネス DX推進部の齋藤です。Comadoのネイティブアプリ開発チームのリーダーを担当しております。

参加してからだいぶ経ってしまいましたが、2024年4月16日(火)〜4月17日(水)に開催されたDevOpsDays Tokyo 2024の参加レポートを書いていきます。

DevOpsDaysとは

  • 世界中で開催されているDevOpsのカンファレンスです
    • 1週間に1回は世界中のどこかで開催されている計算なんだそうです
  • 海外のDevOpsの有識者も招聘されています
    • 国内のトレンドだけではなく、海外のトレンドも抑えられます
    • 今回の注目は、DevOpsDaysの発起人、そしてDevOpsの父であるPatrick Debois氏がDevOpsDay Tokyoに初登壇!

会場の様子は以下です。外国籍の方が多かったです(体感3割程度)。「歩いていける国際カンファレンス」 を目指しているという話があったのですが、あながち間違いじゃないです。

参加のモチベーション

アジリティを高めるために内製化やカイゼン活動に取り組んでいます(この活動内容は、こちらの記事をご覧ください)。 これらの活動のベースとなるDevOpsのトレンドと実践を学びたいというモチベーションで参加しました。

キーワード

DevOpsに関して、前提として知っておいた方がいい5つのキーワードを紹介します。

① DORA

  • Google Cloud のDevOps Research and Assessment(DORA)チーム(以下:DORA)
    • 約10年にわたり36,000 人以上の専門家に対してDevOpsのサーベイを実施。この調査により、ソフトウェアデリバリー、組織のパフォーマンスを向上させる技術、プロセス、文化が明らかにされてきました

② Four Keys

  • DORAが実施した6年間の研究から導き出した、ソフトウェア開発チームのパフォーマンスを示す4つの指標
    • デプロイの頻度:組織による正常な本番環境へのリリースの頻度
    • 変更のリードタイム:commit から本番環境稼働までの所要時間
    • 変更障害率:デプロイが原因となり本番環境で障害が発生する割合(%)
    • サービス復元時間:組織が本番環境での障害から回復するのにかかる時間
    • 詳しく知りたい方はこちら

③ 27 Capabilities

  • DORAが辿り着いた、ソフトウェアデリバリーと組織のパフォーマンスを改善するための27の能力

④ State of DevOps Report

⑤ LeanとDevOpsの科学

  • DevOps関連の書籍でも名著
    • ソフトウェア開発の何がIT企業のパフォーマンスに効果があるかを科学的手法を使って徹底的に調べ上げられています。そのため、さまざまな講演で出典として使われています

印象に残った講演

どの講演も非常に参考になるものでしたが、特に印象に残った講演をピックアップします (なお、現在のチームに応用できそうだと感じた講演をピックアップしています。また、個人の志向が大いに含まれています)。

Value-Driven DevOps Team〜価値貢献を大切にするチームがたどり着いたDevOpsベストプラクティス〜

講演資料はこちら

感想

チーム活動における「カルチャー」と「なりたい姿」の重要性を感じました。

小田中さんのチームは、「価値を最大化したい」 という共通のビジョンを持ち、それを実現するための 「仮説検証ループを迅速に回す」 文化がしっかりと根付いているそうです。このような文化があると、すべての行動基準やプラクティスが自然とこの目指すべき姿に収束すると思います。これによりプラクティスはきっと形骸化せずに運用されますし、継続的にカイゼンされていくことでしょう。素晴らしいです(誰)。

また、インセプションデッキやワーキングアグリーメントの作成によって、チーム内の暗黙的な合意が明文化されるのもまた良いなと感じます。 明文化されていることで、チームが何かの判断で迷った時に目指すべき姿にむきなおれることができます。「チームが迷った時の道しるべ」という考え方、いいですね。

講演中に言及された「カルチャーを編む」という言葉に印象に残ってます。カルチャーは、一気にできあがるわけではありません。また、一度できたカルチャーは不変のものでもありません。チームがおかれている状況やメンバー特性に合わせて日々進化させていくものだと認識しています。メンバーみんながカルチャーを編んでいくというのは言い得て妙だなと思いました。 私もチームでカルチャーを編んでいきたいです。

チームの良好な関係性や開発体験が想像できる講演でした。ぜひ講演資料をご覧ください!

SPI原点回帰論:事業課題とFour Keysの結節点を見出す実践的ソフトウェアプロセス改善

講演資料はこちら

感想

ビズリーチのSODA構想に基づいたソフトウェアプロセス改善(SPI)について詳しく解説された講演です。開発の歴史に裏付けられた実践知がこれでもかと凝縮された濃密な講演と資料です。

「開発生産性を上げるためにはどうすればいいか?」開発現場でよく耳にします。ただアジャイル開発の世界では、開発生産性に拘泥するのは危険との論調もあるようです。生産性を上げるために数値をハックされてしまいますもんね。

そこで、講演中で紹介されていたチームでは、開発生産性ではなく生産能力向上を目指して活動していたそうです。 いわゆる27 Capabilitiesの獲得です。

ビズリーチでは、生産能力獲得のために、SPI Enabling Teamを組成したそうです(Enabling Teamは書籍「Team Topologies」で提唱されているチームの1つ。他のチーム成功を支援し、障害を取り除き、スムーズな進行を可能にするチーム)。大きい開発組織、すごい(語彙力)。

講演の中では、生産能力向上を通じて行った改善事例が詳細に語られていて、私自身ヒントをたくさん得ることができました。 ぜひ講演資料をご覧ください!

DevOpsDaysの感想

  • DevOpsの有効性を改めて認識できます
    • DevOpsは「Four Keysの数値の改善」と「27 Capabilitiesの獲得」によってチームのパフォーマンスが向上し事業に貢献につながることが、統計学的に明らかになっています。つまり、他のアジャイルのフレームワーク(スクラム、XP、Leanなど)と比べて、DevOpsは科学的なアプローチを実践しているフレームワークだと言えます
    • そのため、世間に広く知れ渡っているプラクティスや他社の事例は、前提が違えど、ある程度再現性を持って適用できるのではないかと思っています
      • 例えば、「27 Capabilitiesのトランクベース開発を導入することで、Four Keysのデプロイの頻度の数値が向上する。これにより、結合のリスクが抑えられ、プロダクトを安定的にリリースできる」といったロジックです。多少飛躍はありますが、統計学的に裏付けられたロジックなので、プロダクトの安定的なリリースという目標の見通しが立てやすいです
    • DevOpsDaysではこれらの根拠をベースにしたさまざまな事例やツールが紹介されていたのでとても面白かったですし、自身のチームにも再現性を持って導入できそうです
  • 楽しいです
    • DevOpsのトップランナーの講演を直接聞けるなかなかない機会です
    • 講演者とも話せる機会があります。勇気さえあれば、自分が直面している課題や悩みを相談できます
  • やる気がアップします
    • オフラインイベントには、SpeakerDeckでは伝わらない熱量があります。熱量が自分にも伝搬してきます
    • 「今のチームやプロダクト開発に照らし合わせるとどうなるんだろう」と考えながら聞くと、より自分ごととして捉えることができ、聞いた内容を実践に移しやすくなりそうです
  • お弁当が美味しかったです
    • 今半のすき焼き弁当でした