サントリーウエルネス DX推進部の齋藤です。Comadoのネイティブアプリ開発を担当しております。
今回の記事では、以前執筆したアジリティを向上させるために、開発チームをカイゼンした話の続編です。
チームのアジリティを高めるために、チームのマインドセットを変えていった話になります。
マインドセットの変革
従来、各タスクに対して各メンバーが担当して作業を進めていました。これにより、以下のような状態になっていました。
- メンバー間のコミュニケーションが少ない
- 各メンバーが担当タスクにフォーカスしているため、チームで活動するという意識が希薄
チームが一つの有機体のように作用し、変化に素早く順応するチームにするためには、メンバー間がスキルセットや特性を相互に理解し、一定の目標や決まりごとに基づいてチームワークを発揮することが重要だと考えています。 そこで以下のように取り組みました。
相互理解のための対話
アジャイル界隈のチームビルディングでよく用いられるプラクティスであるドラッカー風エクササイズ(参考:ドラッカー風エクササイズ)を実施しました。これは、以下のような質問に答えてチームに共有することで、メンバーの価値観や強みを理解し、個々のパフォーマンスを最大限に発揮することを目的としています。
- 質問
- 自分は何が得意なのか?
- 自分はどうやってチームの成果に貢献するつもりか?
- 自分が大切に思う価値は何か?
- 自分は何が苦手なのか?(今回導入したオリジナル質問)
ここで意識したのは、オフラインで実施することでした。
ネイティブアプリチームは、メンバーが東京、石川、北海道に分散しており、普段はフルリモートで作業しています。
しかし、チームビルディングは、Face to Faceで実施しなければチームの一体感を醸成するのは難しいと感じています。そこで、東京でネイティブチームギャザリングを開催し、2日間に渡って相互理解のための対話と後述のWorking Agreementの作成を実施しました。
Working Agreement
Working Agreementとは、その名の通り、チームの約束事です(参考:ワーキングアグリーメント)。チームやメンバーに対する暗黙の期待ではなく、こうして明文化することで、一定の価値観のもとでチーム活動を行えるようになります。
決めていく中で工夫したことは、チームメンバー全員の総意を得ることでした。そのために、一人ずつチームに対する期待や理想を付箋に書き出していただき、それに対してチームメンバー全員が意見を交わしていきながら、Working Agreementに収斂していきました。
実際に作成したWorking Agreementは以下のようなページにまとめ、定期的に見直すようにしています。
チーム学習
チーム学習においては、SECIモデルが有名だと思います。SECIモデルとは知識共有と創造性のプロセスを説明するための理論モデルです。
それぞれの要素について説明します。
- 共同化(Socialization)
- 個人間での暗黙知の共有を指します。個人が他の人々との対話や経験を通じて知識を共有し、暗黙知を明示化するプロセスが行われます
- 表出化(Externalization)
- 個人の暗黙知を形式知に変換するプロセスです。個人が自分の経験や知識を言語化し、ドキュメント化することで、他の人と共有できる形に変換します
- 連結化(Combination)
- 組織内での知識の共有と統合を指します。形式知を連結化させることによって、新たな知を生み出します
- 内面化(Internalization)
- 組織で共有された知識を個人の暗黙知として取り込むプロセスです。反復的な実践によって、個人の中に新たな知を取り込みます
これらのイテレーションを回すことで、組織は知識の獲得とイノベーションを創出していきます。
個々に存在する暗黙知を共同化することを目的として、ペアワークとモブワークの実施を推奨しました。 ペアワークやモブワークは他の会社さんのテックブログでも多く取り上げられていますが、私が感じたメリットは以下です。
- 暗黙知が他のメンバーに速やかに継承される
- タスクの属人化を防止できる
- タスクの状態が個人に閉じられないのでフォローしやすくなる
- 対話の絶対量が増える
デメリットとして一時的な開発スピードの低下がしばしば挙げられますが、長期的なスパンで見ると、損益分岐がすぐに訪れると感じています。
また、行動から得られる学習に加えて、チームのメンバーが持っているスキルセットを表出化するべく定期的な勉強会を開催しました。
結果
上記のような取り組みの結果、チームのマインドセットが従来以上によくなったと感じています。具体的には、以下のような効果が見られるようになりました。
- 開発メンバーからのカイゼン提案が増えている
- CI/CDの整備、自動テストの改善、開発プロセスの整備など、様々なカイゼンが提案されている
- 対話やコミュニケーション量が増えている
- 実施前と比較すると、Slackのチャンネル内の発言量が355%増加
- メンバー間の発言量の差が少なくなってきている
- 活き活きと働ける状況になっている
- 独自に集計しているwell-beingスコア(モチベーション、やりがい、ワークライフバランスといった観点での指標)が5段階評価で3.27→3.72に向上
最後になりますが、プロダクト開発においては、様々なスキルセットを持ったメンバーが集まって、それぞれが最大のパフォーマンスを出力できるチームほど強いものはないと思っています。
そんな事業にコミットできるチーム作りに貢献できるように、今後も現場をリスペクトしていきながら頑張っていきたいと思います。