サントリーウエルネス DX推進部エンジニアリングGの坂元です。 プロダクト開発マネジメントを担当しております。
現在Comadoというシニア向けのプロダクトを担当しており、 この記事では「仮説検証を素早く実施する取り組み」を紹介したいと思います。
背景
Comadoは、サントリーウエルネスのお客様が無料でお使いいただける健康行動アプリとして、2022年10月からサービスの提供を開始しました。 リリースから約2年が立ち、アプリ利用者の行動パターンやよく使われる機能が見えてくる中で、顧客体験を更に向上させる施策を日々考え実現しています。 出来るだけ効果の高い施策を実現したいと考える一方で、せっかく開発した機能がまったく使われないことは避けたいです。
効果の高い施策とはなにか?
最小コストで最大の価値提供が行える施策と考えています。
価値提供とは顧客課題を解決できていることを意味しており、顧客課題を見極めることがとても重要となります。
施策実現の流れ
顧客課題を分析し、課題を解決する打ち手を実行した後に効果検証するサイクルを回していきます。
顧客課題の見極めが正しくできていない場合、いくら施策をしても効果はでないです。 一方で顧客課題の見極めはとてつもなく難しいです。 アンケートやインタビューを通じて得られる顧客の声や、顧客行動を分析した上で、 仮説検証を繰り返しながら効果の高い課題・解決策を見つけだすことが必要となります。
Comadoでは、KARTEを活用して仮説検証を素早く行えるようにしています。
顧客課題の見極め
顧客の解像度が低い状態で、施策を実現しても高い効果は期待できません。
顧客を面で捉える
KARTEのユーザータイプ分析を活用し、 顧客のライフサイクル(新規、継続、離脱)を利用頻度からおおまかに分類し、状態遷移を追えるようにしています。
プロダクトの利用状況を大まかに把握できますが、これだけで顧客像は見えてこないです。
顧客特性を分類する
顧客特性を分類し定量化していくことで、顧客像が徐々に見えてきます。 ユーザータイプ分析のユーザー指標を作成し、顧客の特性を分類しています。
顧客特性の分類方法
- 顧客の行動をKARTE Insightのカスタムイベントにて収集し、セグメントを活用して行動特性を分類する
- 外部で保管している顧客属性をKARTE Insightの紐づけテーブルにインポートし、KARTEのユーザー情報と紐づけ分類する
- KARTE Actionのアンケートを活用し、顧客の興味・関心ごとを定期的に収集した上で、アンケート結果から趣向性を分類する
顧客課題の解決策を仮説ベースで考える
ユーザータイプ分析の定量評価では限界もあるため、別でユーザーインタビューの定性評価をしながら、課題を仮説ベースで考え、解決するための打ち手を考えていきます。
施策実現
仮説ベースでの施策の場合は、効果の見極めがまだできていない状態です。
仮説検証で大事なこと
- リードタイムを短縮すること
- いきなり開発コストをかけてリッチな顧客体験を目指すと、顧客提供までのリードタイムが長くなり、顧客からのフィードバックを得る時間も長くなります
- モバイルアプリとのバージョンを分離すること
- モバイルアプリは、変更したアプリをインストールしてもらわないといけないため、Webアプリと比べて価値検証へのハードルが高いです。そのため、アプリのバージョンと分離して外部から自由に変更をリリースできることが望ましいです
- 結果が出なかった施策を素早く捨てられること
- 施策実現のためにプロダクションコードに手を加えると、施策をやめる際にも開発が必要になり、不要なコードが残り続けることもあります。
KARTEでの施策実現
[KARTE]を活用すればプロダクションコードに手を加えずに、施策を実現できます。 施策は主にKARTE Actionを活用し、顧客のアプリ操作イベントに合わせ「ポップアップ」、「埋め込み」、「設定値配信」の3つの接客タイプを利用しています。
※Comadoはネイティブアプリのため、KARTE for APPを利用前提とします。
KARTEの機能間連携イメージ
ポップアップ
ユーザー・イベント情報を参照できるため、顧客属性や行動特性によってターゲットを絞り込み、ABテストで接客の有無による行動の変化を検証しています。
埋め込み
主に新機能など、比較的大きな行動特性の変化を検証する際に活用しています。
JavaScript等でロジックを組み込み可能で、動的に表示内容を変えたりユーザの操作をアクションテーブルに保存できるので、簡易的なWebアプリケーションを十分提供ができます。
ただし、アクションテーブルにはレコード数の上限が20万件などの制約があるため、より高度な要件を実現する場合はKARTE CRAFTを使って外部ストレージを活用したり、CRAFT KVSにデータを保管して利用したりする必要があります。
設定値配信
アプリのプロダクションコードの開発が一定必要になりますが、APIを開発しないで施策を実現する方法として活用しています。
KARTE SDK経由で設定値配信からJSON形式の値を取得可能で、 ユーザ・イベント情報から、動的にユーザ毎に値を返却できます。
アクションテーブルや紐付けテーブルのデータをユーザ毎に返却するような仕組みの場合に、日次で内容を変更するためにKARTE Datahubのジョブフローでイベント情報の集計などを行い、各テーブルのデータを更新したりしています。
施策振り返り
施策を実現した後に、効果分析まで数週間必要になると、次の施策検討まで時間がかかってしまいます。
Comadoでは顧客特性毎の施策による変化を施策実施の次の日から確認できるようにしており、分析を早く行い次の施策を検討できるようにしています。
ユーザータイプの変化を活用し、様々な顧客特性での変化を追いながら、効果の有無を確認し次の施策へ活かすようにしています。
効果が高い施策だった場合
KARTEで実施した施策が効果が高いことが分かった場合には、プロダクションコードに手を加え早くデリバリーできるように開発します。 この検証を素早く回すことができるのがKARTEの良さの1つです。
大事にしていること
顧客の行動変容を促し、行動が変わることで悩みが解決し価値を実感できるような施策にすることです。 価値が実感できれば、結果的にアプリの利用頻度高まることを意識しています。
継続的にアプリを利用してもらうことは事業継続にとって重要なことですが、顧客課題を解消し価値を実感してもらうことも重要だと考えています。
どちらも意識できていることが、良いプロダクトになると信じています。
アンチパターン
顧客のライフサイクル(新規、継続、離脱)や利用頻度に着目し、行動特性の変化を分析しないまま、施策を実施している場合は注意が必要です。
このパターンは事業継続のための施策実現となってしまいます。表面的なアプリの利用頻度が高まる可能性はありますが、本質的な顧客課題の解消が行われない可能性があります。
できるだけ顧客課題を解消できているのかを測れる数値を明確にし、より顧客課題の解消に近い行動特性が変化するのかを意識できるようにしていきたいです。
おわりに
サントリーウエルネスでは、個客の課題だけではなく、ソフトウェアの課題にも向き合っています。 ビジネス・企画・開発がフラットな関係で、見える価値と見えない価値の両軸でものづくりをするように努力しています。
サントリーウエルネスでのものづくりに興味のある方は、ぜひ弊社の採用ホームページをご覧ください。
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